トルコとロンドンをめぐる再保険紛争:準拠法、損害の集積、フォロー・ザ・セトルメントの限界
トルコで発生した損害は、トルコ法に準拠する保険契約で付保され、ロンドン市場で英国法に準拠して再保険に出されていることがあります。損害が再保険の段階に達すると、決め手となるのは保険事故そのものよりも、準拠法、和解の権限、損害の集積、損害の配分、そして仲裁であることが少なくありません。
- 執筆
- Berat Murat Terzioğlu, 法務・国際コーディネーション ディレクター
- 法務監修
- Dr Can Eken, パートナー

トルコで発生した大規模な保険損害は、トルコの保険案件として始まり、英国法に準拠する再保険紛争として終わることがあります。
元受保険契約はトルコで、トルコ企業に対して発行され、全面的にトルコ国内にある財産、賠償責任又は事業活動を担保しているかもしれません。しかし保険者は、そのリスクの一部を、ロンドン市場で手配され、英国法に準拠し、ロンドンを仲裁地とする任意再保険又は特約再保険によって出再している可能性があります。
一つの経済的損害が、こうして複数の法律関係の中に置かれることになります。
この構造が決定的に重要です。元受保険上の責任は、それだけで再保険上の責任を証明するものではありません。保険者と保険契約者の間では妥当な和解であっても、上位の段階では、担保の開始、損害の配分、損害の集積又はクレーム・コントロールに関する問題を生じさせることがあります。そのため、当事務所の保険紛争・保険金請求・仲裁に関するガイドで取り上げるようなトルコの元受保険紛争は、英国法に準拠する再保険契約、ロンドンでの仲裁合意、さらにはトルコでの執行手続と併せて検討する必要が生じることがあります。
本当の問いは、「紛争」がトルコ法と英国法のどちらに準拠するかではありません。
本当の問いは、リスク移転構造のどの部分にどの法が適用されるかです。
この区別は、担保の分析を始める前に確定しておく必要があります。
1. 元受保険と再保険は別個の法律関係である
この点について、トルコ法は明確です。
トルコ商法典(法律第6102号)第1403条は、保険者が自らの付保した利益を、自ら選択する条件で再び保険に付すことを認めています。同条はまた、再保険は保険者の保険契約者に対する債務及び義務を消滅させず、再保険が存在するというだけでは保険契約者に再保険者に対する直接の訴権は生じないと定めています。
二つの契約の経済的なつながりは明らかです。しかし、その法的な独立性は維持されます。
そのため、トルコの保険者は、元受保険に基づき被保険者に保険金を支払う義務を負う一方で、生じた責任が出再した再保険の担保範囲に含まれるかどうかについて、現実の紛争に直面することがあります。
この区別は、大規模な和解の後に特に重要となります。
トルコの保険者が複数の工業施設について財物損害と利益損失(事業中断)を担保しているとします。保険者は自らの保有部分を、ロンドン市場の超過損害額再保険プログラムで保護しています。巨大災害の後、保険者は元受保険契約に基づく多額の請求を和解し、生じた損害を再保険者に請求します。
元受保険の段階では、トルコの保険約款の文言、担保危険、因果関係、免責事由、損害額が争点となり得ます。
再保険の段階では、争点はむしろ特約期間、担保の開始、集積条項、手配時の公正な告知、損害の通知、クレーム・コントロール上の義務、特約年度間の配分などに移ることがあります。
損害は変わっていません。
変わったのは、契約上の問いです。
2. 準拠法は地理ではなく法律関係ごとに決まる
元受保険のリスクがトルコにあるという事実だけで、再保険契約の準拠法が決まるわけではありません。
国際私法及び国際民事訴訟法に関する法律(法律第5718号、MÖHUK)第24条は、渉外的要素を有する契約の当事者に準拠法の選択を認めています。有効な選択がない場合には、同法の最密接関係に関する規定が適用されます。
したがって、元受保険がトルコ法に、出再された再保険が英国法に準拠することは十分にあり得ます。
だからといって、取引全体にとってトルコ法が無関係になるわけではありません。
法律第5718号は、トルコ法の直接適用法規がその本来の適用範囲において効力を有することを留保し、また、外国法の規定を具体的事案に適用した結果がトルコの公序に明らかに反する場合にはその規定を適用しないと定めています。これらは限定的な保護措置であり、外国法を選択する契約上の合意を一般的に覆す仕組みではありません。
したがって、正しい分析は「英国法が適用される」という一言よりも精密なものになります。
代理人は、少なくとも次の点を特定すべきです。
- 元受保険の準拠法
- 再保険契約の準拠法
- 仲裁合意の準拠法
- 承認又は執行に適用される制度
よく設計された構造であれば、これらの答えは意図的に選ばれているかもしれません。
争いのある構造では、これらが事件の帰趨を決めることがあります。
3. 英国法に準拠する再保険では、元の引受けが審査の対象となり得る
再保険契約が英国法に準拠する場合、手配の段階で2015年保険法(Insurance Act 2015)が重要になります。
再保険及び再々保険(retrocession)は、コモン・ロー上は保険契約であり、同法の適用上は消費者以外の保険契約です。この関係では、出再保険会社が被保険者、再保険者が保険者にあたります。
したがって、法定の公正な告知(fair presentation)義務が適用されます。
同法第3条は、被保険者が知り又は知るべきすべての重要な事情、あるいは少なくとも慎重な保険者にさらなる照会が必要であると気付かせるに足りる情報の開示を求めています。告知は合理的に明確かつ理解しやすいものでなければならず、重要な事実に関する表示は実質的に正確でなければなりません。
これにより、手配時の資料一式が、大規模な再保険請求における最初の争点となることがあります。
巨大災害による損害の後、再保険者は、出再保険会社がリスクの集中、過去の損害、エンジニアリング報告書、地震リスクの集積、エクスポージャーのモデリング、引受実務、更新時の重要な変化について何を開示したかを精査することがあります。
問題は故意の不告知に限られません。同法は、故意によらない重大な違反についても、公正な告知がなされていれば保険者がどうしていたか、たとえば引受けを拒絶したか、異なる条件で引き受けたかを問う形で取り扱います。
ロンドン市場を利用するトルコの保険者にとって、その実務上の帰結は重大です。
出再した再保険をめぐる紛争は、損害発生の何年も前、手配時に収集し提示した情報の段階で、すでに始まっていたのかもしれません。
そのため、洗練された損害対応戦略は、損害ファイルだけでなく、引受ファイルから始まります。
4. 「バック・トゥ・バック」の担保には限界がある
再保険は、商業上の用語として、元受保険と「バック・トゥ・バック」(back-to-back)で引き受けられていると表現されることがよくあります。
この表現は便利ですが、法的なルールとして扱うと誤解を招くおそれがあります。
特に任意再保険は、元受保険契約の実質的な要素を再現することを目指す場合があります。条件が「as original」として取り込まれることもあります。てん補限度額、保険の目的又は担保危険が密接に対応していることもあります。
それでも、再保険は別個の契約であり続けます。
英国貴族院の Lexington v Wasa 事件判決が基本となります。この事件では元受保険と任意再保険の文言がきわめて近似していましたが、再保険は英国法に準拠していました。貴族院は、バック・トゥ・バックの担保に関する商業上の期待は解釈において考慮し得るものの、再保険契約で引き受けたリスクを超える元受保険上の責任について、再保険者に自動的に責任を負わせることはできないと判断しました。被再保険者は、損害が元受保険の担保範囲に含まれること、及び該当するリスクが再保険のもとで引き受けられていたことの双方を立証しなければなりませんでした。
この原則は、元受保険契約と再保険が異なる法体系に準拠する場合に特に重要です。
トルコの裁判所の判決やトルコ法に準拠する和解によって、元受保険の段階で責任が確定することはあり得ます。
しかし、それによって英国法に準拠する再保険契約の時間的又は事項的な範囲が自動的に広がるわけではありません。
バック・トゥ・バックは解釈上の文脈であり、再保険の文言の解釈に取って代わるものではありません。
この命題は、トルコとロンドンにまたがるあらゆる再保険分析の中心近くに据えるべきものです。
5. フォロー・ザ・セトルメントは合意されていない担保を生み出さない
同じ規律は、フォロー・ザ・セトルメント(follow the settlements)条項にも当てはまります。
この条項の商業上の機能は重要です。原則として、出再保険会社は、元受保険の請求を立証し又は訴訟で争い、そのうえで同じ責任を再保険者との間で一から争い直すことを強いられるべきではありません。
そのため、英国法はフォロー・ザ・セトルメント条項に実質的な効力を認めています。
Assicurazioni Generali v CGU 事件において、イングランド控訴院は、Insurance Co of Africa v SCOR 事件に由来する確立した定式を再確認しました。すなわち、出再保険会社が認めた請求が法的に再保険の担保危険の範囲内にあり、かつ出再保険会社が誠実に行動し、和解に際して適切かつ事業上合理的なあらゆる措置を講じた場合には、再保険者はその和解に追随する義務を負い得るというものです。
これらの要件は、それぞれ異なる機能を果たしています。
第二の要件は、出再保険会社が行った合理的な商業上の妥協を、再保険者が一つひとつ争い直すことを防ぎます。
第一の要件は、再保険契約の境界を守ります。
したがって、フォロー・ザ・セトルメント条項は、出再保険会社が支払ったから再保険者も支払わなければならない、という意味ではありません。
この点は、一つの和解で複数の要素を同時に解決する場合に特に重要になります。
一つの合意で、複数の被保険会社、所在地、保険期間又は損害項目にかかる請求が和解されることがあります。財物損害、利益損失、防御費用、担保に争いのある要素が含まれることもあります。保険者には、包括的な和解を結ぶ十分な商業上の理由があるかもしれません。
問題は、その包括的な和解が、包括的には反応しない再保険プログラムに請求されたときに生じます。
その場合、和解を契約構造に改めて対応させる必要があります。
実務上の誤りは、和解契約を紛争の終わりとして扱うことです。
再保険の比重が大きい損害では、和解契約こそが、次の紛争を避けられたかどうかを決める文書になり得ます。
6. クレーム協力とクレーム・コントロールは和解の分析を変え得る
フォロー・ザ・セトルメント条項は、決して損害処理に関する条項から切り離して読むべきではありません。
クレーム協力条項(claims cooperation)は、通知、情報共有又は協議を求めることがあります。
より強力なクレーム・コントロール条項(claims control)は、和解を含む一定の決定に先立って再保険者の同意を求めることがあります。
法的効果は、具体的な文言によって決まります。
2025年10月の商事裁判所による Royal & Sun Alliance v Equitas 事件判決は、これらの条項が現代の再保険訴訟においてどのように相互に作用し続けているかを示しています。裁判所は、とりわけ、クレーム協力条項がフォロー・ザ・セトルメント条項の作用を変更又は制限したかどうか、そして元受保険の損害を和解する際に適切かつ事業上合理的な措置が講じられたかどうかを検討しました。
この判決は、より一般的な論点を補強するものとして有用です。
条項の名称が契約上の効果を決めるわけではありません。
問うべきは、条項が発動したか、何を求めていたか、同意又は協議が必須であったか、そして遵守されなかった場合にどのような効果が生じるか、という点です。
この分析は、国際的な再保険者のパネルがまだファイルを審査している間に、元受保険者が保険損害を解決するよう強い商業的圧力を受けることのあるトルコの損害において重要です。
解決策は、再保険者に元受保険の請求の主導権を自動的に委ねることではありません。
和解が終わるまで再保険を無視することも、合理的ではありません。
重要な決定が後戻りできなくなる前に、損害処理に関する権限の契約上の配分を理解しておく必要があります。
7. 紛争の経済的帰結は損害の集積で決まることが多い
大規模な超過損害額再保険の紛争の多くは、主として損害が発生したかどうか、あるいは担保されているかどうかをめぐるものではありません。
数え方をめぐるものです。
出再保険会社が各損害の最初の1,000万ユーロを保有し、その保有額を超える部分について4,000万ユーロの担保を購入しているとします。
それぞれ600万ユーロの独立した損害が十件あっても、回収は全く得られないかもしれません。
適切に集積された6,000万ユーロの一つの損害であれば、レイヤーに大きく食い込むことがあります。
この違いは言葉の問題ではありません。
担保の経済的な設計そのものです。
したがって、最初の問いは集積条項の文言でなければなりません。
当事者は、「一つの事象」(one event)、「一つの事故」(one occurrence)、「一つの巨大災害」(one catastrophe)、「一つの起因原因」(one originating cause)、あるいはその他の定義された集積要素を選択しているかもしれません。元受保険の請求が商業的に関連しているように見えるからといって、これらの表現を互換的なものとして扱うべきではありません。
集積の分析は、スプレッドシートではなく文言から始めなければなりません。
これは、トルコに関わる巨大災害リスクにおいて特に重要です。
一度の地震が、さまざまな付保物件で数百件の請求を生じさせることがあります。商業的には、それらの損害は一つの巨大災害のように見えるかもしれません。それでも特約上は、契約上の事象、地理的及び時間的な限界、余震、別個の物理的損害、適用される時間条項(hours clause)を分析する必要があるかもしれません。
すべての請求が最終的に同じ災害にさかのぼることができるという事実は、必ずしも契約上の基準ではありません。
近年の英国判例もこの点を裏付けている
UnipolSai v Covéa 事件において、イングランド控訴院は、新型コロナウイルス関連の利益損失を背景に、財物巨大災害の超過損害額再保険を検討しました。この紛争は、別の定式のほうが経済的に有利に見えるからといって他の概念に置き換えるのではなく、実際に合意された集積用語(同事件では「巨大災害」)を解釈しなければならない理由を示しています。
同じ規律は、2026年4月に商事裁判所が判断した WRBC Corporate Member v AXA XL 事件にも表れています。この紛争は、損害が「一つの事象から生じる」ことを要件とする文言のもとで、多数の元受保険上の中止損害を集積することに関するものでした。裁判所は、個々の損害の間の事実上の関連性に移る前に、まず特約の文言の解釈から始めました。
順序が重要です。
まず、契約上の集積要素を特定します。
次に、その要素に照らして事実を検討します。
逆ではありません。
ロンドンで手配されたトルコの巨大災害リスクにとって、この方法論上の点は、非常に大きな回収額を左右し得ます。
8. 損害の配分は別の問題を解決する
損害の集積は、複数の損害を一つの損害として扱えるかを問います。
損害の配分(allocation)は、ある損害がどこに属するかを問います。
ロングテールの賠償責任は、この区別を特に難しくすることがあります。
専門職業賠償責任、建築上の瑕疵、環境への曝露、生産物賠償責任、職業病は、元受保険の複数の保険年度に関わることがあります。出再した再保険プログラムも、その期間中に変わっているかもしれません。
年度ごとに、保有額、てん補限度額、免責事由、再保険者が異なることがあります。
したがって、損害の配分は経済的な負担を再分配します。
Equitas v Municipal Mutual Insurance 事件におけるイングランド控訴院の判決は、再保険の段階でこの問題を示しています。この事件では、複数年度にわたるアスベスト関連の責任を、回収を最大化するために選んだ年度ごとの再保険契約に実質的に請求できるのか(いわゆる「spiking」の問題)、それとも損害を別の基準で扱うべきかが争われました。
アスベストという特殊な文脈であっても、より一般的な教訓が薄れるわけではありません。
出再保険会社は、その年度が最良の再保険上の結果をもたらすかどうかとは無関係に、なぜ損害が特定の年度に属するのかを説明できなければなりません。
回収可能なレイヤーを特定した後に初めて組み立てられた配分の理論は、精査を招きます。
とりわけ、元受保険の和解が意図的に期間ごとの責任の割振りを避けていた場合にはなおさらです。
元受保険の段階での商業上の確実性が、再保険の段階で不確実性を生むことがあります。
9. 再保険の回収を準備する前に、通知と証拠を管理しなければならない
大規模な損害が最初から全体像の明らかな形で現れることはまれです。
当初は、損害が出再保険会社の保有額の範囲内にとどまるように見えるかもしれません。その後、利益損失が膨らみ、新たな被害拠点が判明し、鑑定人が見積りを修正し、訴訟が進展し、支払備金が増えていきます。
出再保険会社が出再プログラムに影響が及ぶと判断する時点では、契約上の通知の発動要件がすでに満たされているかもしれません。
通知条項の内容は大きく異なります。
損害の発生に結び付けられているものもあります。
請求、一定の事情、支払備金の基準額、あるいは特約に合理的に影響を及ぼすと見込まれる事項に結び付けられているものもあります。
したがって、再保険プログラムは、回収の請求準備が整った何年も後ではなく、元受保険の請求が重要になった時点で見直すべきです。
同じ原則は証拠にも当てはまります。
大規模な再保険紛争では、最終的に、引受時の提示資料、スリップ、保険約款の文言、裏書、ブローカーとの通信、エクスポージャーのデータ、巨大災害モデル、ボルドロー、支払備金の履歴、専門家報告書、和解の申出、社内承認、再保険者との通信、配分に関する文書が必要になることがあります。
これらの記録を、引受と損害処理の別々のアーカイブとして捉えるべきではありません。
紛争が生じれば、それらは一つの証拠の履歴を形づくります。
エクスポージャー・モデルが公正な告知の証拠になることがあります。
支払備金の履歴が通知の問題に関係することがあります。
和解に関するメモが、出再保険会社の対応が適切であったかどうかを決めることがあります。
過去のボルドローが、当事者自身が特約をどのように理解していたかを示すことがあります。
そのため、最も強い再保険請求は、正式な支払請求に先立って築かれていることが少なくありません。同じ記録は、後に第三者に対する保険者の代位と求償の権利も支えます。これも、記録を一つのファイルとして管理すべき理由の一つです。
10. ロンドン仲裁には新たな準拠法の枠組みがある
ロンドンを仲裁地とする仲裁では、2025年仲裁法(Arbitration Act 2025)が分析の重要な部分を変えました。
主要な改正は2025年8月1日に施行されました。1996年仲裁法の新たな第6A条は、仲裁合意は当事者が明示的に選択した法に準拠し、そのような明示的選択がない場合には仲裁地の法に準拠すると定めています。
同法には、国際契約にとって特に重要な点も含まれています。主たる契約について準拠法を選択しても、それだけでは仲裁合意についてその法を明示的に選択したことにはならない、という点です。
「準拠法:トルコ法」及び「仲裁地:ロンドン」という条項を含む再保険特約を考えてみましょう。
2025年以降の英国の制定法の枠組みのもとでは、一般的なトルコ法条項を、仲裁合意そのものについてトルコ法を明示的に選択したものとして扱うべきではありません。
この区別により、契約の起草はむしろ重要性を増しています。
国際的な再保険契約では、実体の準拠法、仲裁地、仲裁合意の準拠法、選択した手続規則又は仲裁機関規則を、それぞれ別個に定めるべきです。
仲裁条項は、事務的な定型文言ではありません。
より大きな契約構造の中にある、独立した法的手段です。
11. ロンドンの仲裁判断はトルコでその道のりを終えることがある
仲裁地は、最終的にどこで執行が必要になるかを決めるものではありません。
関連する資産がトルコにある場合、ロンドンで下された仲裁判断は、トルコにおける外国判決及び仲裁判断の承認・執行の手続を経る必要があるかもしれません。
トルコと英国は、外国仲裁判断の承認及び執行に関する1958年ニューヨーク条約の締約国です。トルコは、相互主義の留保及び商事の留保を付して同条約を適用しています。
この枠組みにより国境を越えた執行は大きく容易になりますが、執行計画が不要になるわけではありません。
仲裁を開始する前に、代理人は、相手方の重要な資産がどこにあり、どの会社が保有しているか、保全措置が必要になり得るか、どの法域で仲裁判断の承認が必要になり得るかを把握しておくべきです。
仲裁判断は、抽象的な法的勝利ではありません。
執行のための手段です。
事件の構造は、最初からそのことを反映しているべきです。
12. トルコでの並行手続とロンドンの再保険仲裁は一つの戦略として扱うべきである
被保険者とトルコの保険者との紛争が続いている間に、保険者は同時に再保険者に対する権利を保全し、又は行使していることがあります。
法的には、これらは別個の手続です。
しかし戦略上は、常に別々のファイルとして扱えるわけではありません。
トルコの裁判所に提出した主張書面が、後に再保険紛争で意味を持つことがあります。
元受保険の紛争のために作成した専門家報告書が、上位の段階での因果関係や集積の分析に影響することがあります。
和解を促すために行った譲歩が、再保険上の立場を変えることがあります。
被保険者と保険者の間では完璧に機能する和解の構造が、どの特約年度、どのレイヤー、どの担保区分が対象となるかの立証を、不必要に難しくすることもあります。
したがって、国際案件を扱う代理人の役割は、法的に別個の関係を一つにまとめることではありません。
それらが互いに矛盾する形で処理されることを防ぐことです。
この区別は重要です。
元受保険の訴訟、出再分の回収、仲裁戦略は、法的には別個のまま、事実の面では連携させておくべきです。
13. PRICL 2025:有用ではあるが、当然に準拠法となるわけではない
2025年再保険契約法原則(Principles of Reinsurance Contract Law、PRICL 2025)は、高度な国際取引にとって追加の参照基準となります。
PRICL は、損害処理、フォロー・ザ・セトルメント及びフォロー・ザ・フォーチュン(follow the fortunes)、損害の配分、損害の集積、バック・トゥ・バックの担保について、具体的な規定を置いています。国内法としてではなく、統一的なソフトローの枠組みとして策定されたものです。
そのフォロー・ザ・セトルメントの定式自体が示唆に富んでいます。第2.4.3条によれば、この原則は、当該損害が再保険契約の担保範囲に含まれる限度においてのみ機能します。
これは、本稿の分析全体を貫く中心的な区別と一致しています。
PRICL は、契約に取り込むことも、特に仲裁において有用な国際的参照基準として用いることもできます。
しかし、英国法、トルコ法、あるいはそのいずれかの法体系のもとで適用される強行規定と混同すべきではありません。
その価値は、再保険関係に共通の言語を提供する点にあります。
その存在によって、準拠法を特定する必要がなくなるわけではありません。
結論
トルコとロンドンにまたがる再保険紛争の難しさは、損害の規模だけから生じるものではありません。
損害がリスク移転構造の中を移動するにつれて、その法的性質が変わることから生じます。
元受保険の段階では、問題は、トルコの保険者がトルコの保険契約に基づき保険金を支払う義務を負うかどうかであるかもしれません。
再保険の段階では、同じ支払が英国法上の契約解釈の問題に変わることがあります。
元受保険上の責任が多数にのぼる場合、紛争は損害の集積に左右されることがあります。
複数の期間にまたがる場合は、損害の配分に左右されることがあります。
出再保険会社がすでに和解している場合、紛争はフォロー・ザ・セトルメントの及ぶ範囲をめぐるものになることがあります。
再保険者が契約上のコントロール権や協議権を有している場合、損害処理の過程そのものが重要になることがあります。
リスクの告知が不十分であった場合、紛争は手配の段階にまでさかのぼることがあります。
そして当事者がロンドン仲裁を選択していた場合、最終的な仲裁判断が執行のためにトルコに戻る前に、仲裁合意は2025年以降の制定法の枠組みの中に置かれることになります。
したがって、トルコ法と英国法のどちらが適用されるかという抽象的な問いには、有用な答えがありません。
重要な国際再保険案件では、より精密な分析が求められます。どの契約か。どの論点か。どの法か。どの法廷地か。どの資産か。
法的な優位は、損害が容易には元に戻せない形で配分され、和解され、請求される前に、これらの問いに答えておくことにあります。
Terziolu & Partners によるサポート
Terziolu & Partners は、トルコの元受保険リスクが国際的な再保険プログラムと交わる紛争を含め、複雑な保険及び再保険案件のトルコ法上の側面と国際的な側面について助言を行っています。
当事務所の業務は、元受保険の関係、出再した再保険の構造、適用されるトルコ国際私法の分析、損害処理及び和解の戦略、損害の集積及び配分の問題、当事務所の紛争解決業務の一環としての国際仲裁、並びにトルコにおける承認又は執行に及ぶことがあります。
案件が英国法その他の外国法体系に関わる場合には、国境を越えた法務調整を通じて、関係する法域で適切な資格を有する弁護士と連携しながら、イスタンブールとロンドンの間で戦略を調整することができます。
目的は、元受保険の請求、再保険の回収、そして生じ得る紛争を、互いに無関係な案件として扱うことではありません。これらは同じリスク移転の中にある別個の法律関係であり、それに応じて管理されるべきものです。再保険プログラム、和解又は紛争についてご相談の際は、当事務所までお問い合わせください。
主要な参考資料
トルコの法令
トルコ商法典(法律第6102号)第1403条(再保険)。
国際私法及び国際民事訴訟法に関する法律(法律第5718号)(2007年12月12日付官報)第5条(公序)、第6条(直接適用法規)及び第24条(契約上の債務の準拠法)。
イングランド及びウェールズ
Insurance Act 2015:Part 2(公正な告知義務)及び Schedule 1(重大な違反に対する救済)。再保険及び再々保険への適用を含みます。
Arbitration Act 1996 第6A条(仲裁合意の準拠法)。Arbitration Act 2025 により新設されたものです。
主要な再保険判例
Insurance Co of Africa v SCOR (UK) Reinsurance Co Ltd [1985] 1 Lloyd's Rep 312。
Assicurazioni Generali SpA v CGU International Insurance Plc [2004] EWCA Civ 429:フォロー・ザ・セトルメント。
Lexington Insurance Co v AGF Insurance Ltd; Lexington Insurance Co v Wasa International Insurance Co Ltd [2009] UKHL 40;[2010] 1 AC 180:バック・トゥ・バックの担保、準拠法及び再保険リスクの範囲。
Equitas Insurance Ltd v Municipal Mutual Insurance Ltd [2019] EWCA Civ 718;[2020] QB 418:ロングテール再保険における損害の配分と「spiking」。
UnipolSai Assicurazioni SpA v Covéa Insurance Plc [2024] EWCA Civ 1110:財物巨大災害の超過損害額再保険における巨大災害単位の集積。
Royal & Sun Alliance Insurance Ltd v Equitas Insurance Ltd [2025] EWHC 2704 (Comm):任意再保険、フォロー・ザ・セトルメント、クレーム協力、適切かつ事業上合理的な損害処理。
WRBC Corporate Member Ltd v AXA XL Syndicate Ltd [2026] EWHC 939 (Comm):「arising out of one event」の文言による集積。
国際的な資料
Principles of Reinsurance Contract Law 2025 (PRICL 2025)(UNIDROIT が公表した全文)。損害処理、フォロー・ザ・セトルメント(第2.4.3条)、損害の集積、損害の配分、対応する担保に関する規定を含みます。
外国仲裁判断の承認及び執行に関する1958年条約の締約国の状況(UNCITRAL)。トルコと英国はいずれも締約国です。
関連記事
- 保険
保険紛争:保険金請求、賠償、仲裁
保険紛争は、保険証券を読むだけでは解決できません。損害の性質、補償の範囲、免責、損害鑑定報告、裏付け証拠、代位求償の見通し、そして仲裁と訴訟のいずれを選ぶかを、一体として検討しなければなりません。
- 保険
トルコにおける保険代位と求償回収:保険金支払の背後にある請求権を守る
保険金の支払は、被保険者が第三者に対して有していた請求権を保険者に移転させることはあっても、その請求権の内容を改善するものではない。保険者は、保険契約上まったく有効な請求に対して保険金を支払いながら、責任制限条項、経過した消滅時効期間、仲裁合意、証拠の欠落、あるいは被保険者が既に与えていた免責によって回収を阻まれることがある。本稿では、トルコ商法典第1472条および第1481条に基づく法定代位、査定期間中における回収権の保全、消滅時効と裁判管轄、一部填補、契約によるリスク配分、複数当事者が関与する損害、そして国際的執行について検討する。
- 紛争解決
外国判決および仲裁判断のトルコにおける執行
外国の裁判所の判決および仲裁判断は、トルコで自動的に執行できるわけではありません。債権者、投資家、国際企業は、国外で手続を始める前、またはトルコ国内の資産から回収を図る前に、承認と執行の手続を理解しておくべきです。
- 会社法務・商事
取締役の義務、D&O保険および取締役会の危機戦略:有限責任が「有限」に感じられなくなるとき
有限責任は会社を保護します。しかし、それは取締役の姿を見えなくするものではありません。事業が危機に陥ると、かつては商業的判断に見えた決定が、後に義務、利益相反、不当取引、保険の通知、あるいは証拠として精査されることがあります。本稿では、取締役、創業者、投資家、そして同族企業が、プレッシャーが個人に及ぶ前に、取締役会の責任、D&O保険、そして危機戦略についてどのように考えるべきかを解説します。